おもしろFlash最盛期を支えたネ申曲◆Michel Polnareff『Tout, tout pour ma chérie(シェリーに口づけ)』
はじめに
2000年代はじめのインターネット界隈。Web制作ツールがまだ普及しておらず、いわゆるオタクたちが独力でプログラムを組んで不気味な個人ホームページを乱立させていた頃。「キリ番を踏んだ方はお知らせください」とかがあった頃。
「おもしろFlash」というコンテンツが一般に向けて大いに流行っており、オタクうごめくインターネッツの裾野を広げることに一役買っていました。
そのFlashムービーの中でも特に知名度が高かったのが、空耳の歌詞に合わせてAA(アスキーアート)が可愛く踊る「トゥートゥートゥマシェリー」でした。
youtubeなどの動画サイトが興隆し、さらには2020年にAdobeのFlashPlayerがサポート終了するにあたり、見る機会が無くなるであろうFlashムービーの、往年の人気を支えた曲をご紹介します。
Michel Polnareff『Tout, tout pour ma chérie(シェリーに口づけ)』
↑原曲
1969年に、当時すでにフランスの国民的アーティストであったミシェルポルナレフによりリリースされたこの曲は、同時期にひっそりと日本でも発売されていましたが、当時の日本では全くヒットしませんでした。
その後、1971年にレーベルを変えて(正確には「CBSソニー」から、CBSソニー内で立ち上がったレーベル「エピック」に権利移行されて)再販されると、途端に40万枚を売り上げる大ヒットソングになりました。売り方って大事。
シェリーという女性を歌った曲と勘違いしそうですが、フランス語のシェリーは英語のダーリンやハニーを意味し、「愛しい人」を広く表す言葉との事。なので邦題が『シェリーに口づけ』である理由は公式には不明だそうですが、理由も何もフランス語を知らない人が訳しただけでは?違ってたらすみません。
軽快な曲なので、TVでも番宣CMや車のCMで多用されている気がします。
音大の元祖であるパリ大学院に入学し成績1位を修める超音楽エリートながら、ロックに目覚めてしまい専攻であるクラシックに飽き、さらに就職した保険会社で上司と対立して辞め、日本公演の際は自身の生尻を出したポスターを制作するという、音楽性に似合わずなかなか破天荒な性格をしているミシェルの珠玉のポップラブソング。
昼下がりに聴いてうららかなエスプリを感じ、夜に帰ってFlash動画でゲラゲラ笑う。そんな、一風変わった楽しみ方ができる曲でした。
5人兄弟と誤解されがち◆Jackson5『I Want You Back』
はじめに
デビュー曲でいきなりヒットしたアーティストと聞いて、みなさんは誰を思い浮かべますか?……はい、どれも大したことない。
まあまあ、そう怒らないでください。
実際に、1969年にモータウンレコードからデビューした今回のアーティストには恐らく敵いません。デビューシングルと、その曲が収録されたアルバムの世界での売り上げは1,100万枚以上。さらにデビューしてからというもの、4作連続でビルボードHOTとビルボードR&B部門でトップに君臨し続け、しかもメンバー全員が子供。
アメリカの片田舎から瞬く間にトップスターに君臨したモンスターアーティストの、鮮烈なデビュー作をご紹介します。
Jackson5『I Want You Back』
名前の通りジャクソン家の兄弟5人で構成されており、おなじみマイケルジャクソンはメンバーの中では一番末っ子で当時11歳。この曲ではリードボーカルを担当し、屈託のないボーイソプラノを披露しています。よく5人兄弟と思われていますが、ジャクソン家は全員で10人兄弟です。
とても可愛らしく、トップアイドルとしての魅力が色褪せないジャクソンファイブ。初めて白人から人気を博した黒人のアイドルだそうです。
女性人気はジャーメイン(ボーカル・ベース)とマイケルが群を抜いてモテたらしいのですが、マイケルは女性に対して内向きな思春期を過ごしたようです。おそらくモテすぎて。
とにかく人気で、とにかく世界を虜にしたジャクソンファイブ。
マイケルの美声もさることながらモータウンレコード特有のベースラインも聴きごたえがあり、さすが色んな切り口で楽しめる曲で何回聴いても聴き足りません。
鬼滅の『炎』のめっちゃすごい版◆Ray Parker Jr.『Ghostbusters』
はじめに
世は空前の鬼滅の刃ブーム、劇場版の1日の上映本数は多いところで42本(バスかよ)。その劇場版のテーマソングということで、めざましテレビを中心に話題沸騰のLiSAさんの『炎(ほむら)』。
Apple Musicのグローバルランキングではなんと日本人アーティスト歴代最高位を獲得したそうで、もはや鬼滅本編にも負けない影響力を持った曲になりつつあります。
それでは時を遡り、同じく世界中で大ヒットを記録し、社会現象を巻き起こした映画主題歌をご紹介します。
Ray Parker Jr.『Ghostbusters』
1984年に公開された同名映画の主題歌である『Ghostbusters』。
映画の内容は、4人の男たちが幽霊退治を行う会社「ゴーストバスターズ」を設立しニューヨークを救うという物語で、レイの曲は「ゴーストバスターズ」を宣伝する架空のCMソングとして書かれました。
ミュージックビデオも映画と同じアイヴァン・ライトマンがメガホンをとっています。
映画と共に世界的なヒットを飛ばし、売れに売れまくったこの曲で、レイはグラミー賞を受賞しました。
しかし、ヒューイルイスというアーティストの『I Want A New Drug』という曲に酷似していると、レイとコロンビア映画はヒューイに著作権侵害で告訴されてしまいます。のちに金銭的和解がとられましたが、今度は支払いについて口外してしまったヒューイをレイが守秘義務違反で告訴しました。
さて、この泥沼の裏側はと言いますと。
コロンビア映画がヒューイに、ゴーストバスターズの主題歌を作るかもしくは『I Want A New Drug』を使用させてほしいと打診したところ断られたため、行儀の悪いコロンビア映画のプロデューサーが急遽レイに『I Want A New Drug』に似た曲を依頼した、という経緯があったそうで、コロンビア映画からの依頼に合意したとはいえ、レイは半ばとばっちりを食らったような話だったのです。
Huey Lewis And The News『I Want A New Drug』
鬼滅の刃ならびにLiSAさんは、変な騒動に巻き込まれず平穏無事にブームを全うすることを祈っています。厄除けの合言葉はもちろん「ゴーストバスターズ」!
…「なんちゃらの呼吸」は相手が鬼なので。厄とかではないので。
モノマネしやすい曲◆Michael Jackson『Man In the Mirror』
はじめに
俳優・大泉洋を全国区タレントに押し上げた、伝説的バラエティ『水曜どうでしょう』。
その中で大泉洋がモノマネを披露したのが、今回の曲。
「ダッ!」「アッ!」などの独特のマイケル呼吸が冒頭からふんだんに盛り込まれています。
サビに向かって「ダジャワンノンワンナンヂャンノウッ」と駆け込む感じが、なんともベリーマイケル。
大泉洋さんのように面白くはできませんが、特徴的な曲なので誰がモノマネしてもある程度似ちゃいます。
ぜひトライしてみてくだい。
深い深いメッセージ性を持ちながら、モノマネしやすい(親しみやすい)名曲を
本日はご紹介します。
Michael Jackson『Man In the Mirror』
1988年にリリースされたアルバム『Bad』に収録されている曲で、ショートフィルム(ミュージックビデオ)は
サムネイルに写っているキング牧師のスピーチなど、人種差別や環境破壊のようなマイケルの思想を強く反映したシーンを繋いで構成されています。
「世界を変えるために、まず鏡に映る自分が変わろう」というクリアでシンプルなメッセージが曲名の由来です。
「キングオブポップ」として時代を創り、世界を音楽で変えようとしたマイケルが歌い上げるからこそ、迫力と説得力を伴った曲に仕上がったように思います。
「チャート○位を記録」なんて定量的な
レビューができる次元ではない曲であり、当時と比べて多くの人にとって暮らしやすくなった現代においても、十二分に私たちの胸を打つメッセージで綴られた『Man In the Mirror』。
モノマネしやすいとかイジって、どうもすみませんでした。
ちなみに、マイケルのバックダンサーは、ツアーを終えるころにはガリガリに痩せていたそうです。
運動量がすごくて。
ノれるボサノバの金字塔◆Sergio Mendes『Mas Que Nada』
はじめに
トヨタ シエンタのCMソングや、松田翔太さんが出演されているギャッツビーのCMソングに使われていた今日の曲。
1966年に世界的なヒットを生み、ボサノバブームの火付け役となった偉大な曲です。
今日は、日本中の誰もがサビを聞けば「あ~!」となる、ボサノバ界の知名度ナンバーワンソングをご紹介します。
◆Sergio Mendes&Brasil’66『Mas Que Nada』
原曲は1963年にジョルジベンにより発表され、それをセルジオメンデスが「Sergio Mendes&Brasil'66」というアルバムの中でカバーしたのが、今回の曲。
ボサノバはブラジルの伝統的な音楽ジャンルであり、原曲のジョルジベンも、カバーのセルジオメンデスもブラジルっ子ですから、曲名「マシュ・ケ・ナダ」は当然、ポルトガル語のはず。
ですが、身の回りにブラジル人がいる幸運なあなたは、彼らがこの曲名をうまく訳せない(そんな言葉は無い)と答えることに困惑するでしょう。
それもそのはずで、この「マシュ・ケ・ナダ」という言葉は60年代当時のサンパウロのスラングという、きわめて局所的な使われ方をされていた言い回しなんです。
意味は「なんてこった」的な感じ。スラングなので意味が曖昧です。
そんな通じにくいタイトルつけて、よく世界的なヒットを飛ばせたなと、「音楽は国境を超える」を地で行くこの曲に感服です。
世界初のベースソロ◆The Who『My Generation』
はじめに
1965年。第二次世界大戦の終戦から20年。日本という国は熱気に満ちていました。
原宿では国内初の億ションが販売され、東海道新幹線「ひかり」は東京ー新大阪間を3時間余りで結び、建設・不動産・金融業界を中心に、日本は長期的な好景気の中にありました。
そして、海の向こうイギリスでは、ビートルズ、ローリングストーンズと並ぶロックバンドが3枚目のシングルをリリースし、モッズたちを熱狂させていました。
The Who『My Generation』
映画『ミニオンズ』で、ミニオンたちが宮殿ではしゃいでいるシーンのBGMに使われていましたね。
ザ・フー(何者)というふざけた名前だけを見て、このバンドを侮ってはいけません。
はじめにお話しした通り、このバンドはロック界でビートルズ、ローリングストーンズと並び称される伝説的ロックバンドであり、『My Generation』はリリース当時の全英チャートで2位を記録。鬱屈していたイギリスのティーンズの心を強く惹きつけるバンドとなり、一気にスターの座へ駆け上がりました。
曲中で世界初のベースソロが演奏されており、当時のリスナーは初めて聞く音色に、ちょっと音の低いギターソロだと勘違いしたそうです。
実は木村カエラもカバーしている『My Generation』。
この曲を聴きながら、エアギターならぬエアベースをプレイし、曲が持つ熱量を全身で感じてみてはいかがでしょう。
もうええもうええもうええもう◆Ray Charles『Hit the Road Jack』
はじめに
黒人×盲目×キーボード。そう聞くとスティービー・ワンダーともう1人、思い浮かぶアーティストがいます。
R&Bの申し子、レイ・チャールズです。
90年代に、サザンオールスターズの名曲『いとしのエリー』を英語カバーし、
日本でもヒット(Wikipediaには小ヒットとの記述が。失礼な。)を記録したレイ。
そんなレイが1961年、スター街道邁進の真っただ中で世に放った名曲をご紹介します。
Ray Charles『Hit the Road Jack』
サビでは、
コーラス隊「出て行けジャック、帰ってくるな!」
レイ(ジャック)「え?なんて?」
というなんとも力の抜けるやりとりが繰り返されています。
しかしこの曲で、それまでアメリカのスターだったレイが世界の大スターに躍進し、翌年『I Can't Stop Loving You』をリリースする頃には、すでに彼は天才の名を欲しいままにしていました。
どこまでも音楽に意欲的で、ゴスペル・ブルース・ジャズ・R&Bなど幅広く吸収し、まるでアメリカ音楽の歴史そのもののような天才、音楽界の巨人。
しかし2004年10月に公開された伝記映画『Ray/レイ』の完成を待たずして、
2004年6月、肝臓癌により73年の生涯に幕を下ろしました。
今日も僕は、「え?なんて?」とひょうきんな天才に会うために、再生ボタンを押しています。
原題が日本語なんだ◆Quincy Jones『Ai No Corrida(愛のコリーダ)』
はじめに
2007年、資生堂「uno」がオーランドブルームを主演に据えてTVCMを放送していました。
たしか僕は当時、英語の苦手な中学生で、耳に残った空耳のまんま「アイノコリーダッ♩」と歌っていました。
大人になって知りましたが、この空耳、正解だったようです。
Quincy Jones『Ai No Corrida(愛のコリーダ)』
曲名の通り、サビでおもいっきり「アイノコリーダッ♩」と歌っています。この『Ai No Corrida』という曲名は、1976年に日仏合作で制作された映画のタイトルから取られています。
今回紹介している曲はクインシージョーンズによるカバー版。原曲は1979年リリースのChaz Jankel『Ai No Corrida』。
原曲を忠実に再現しながらもダンサブルにキレよく生まれ変わり、80年代ダンスシーンを彩った『Ai No Corrida(愛のコリーダ)』。
この曲をBGMに朝の仕度をした日には、あなたも気分はオーランドブルームです。
疾走感あふれる不倫ソング◆Stevie Wonder『Part-Time Lover』
はじめに
僕は昔の曲が大好きです。
社会人になりたての頃、カラオケ好きの僕は、
「飲みニケーションの延長で、 職場のおっちゃん世代とカラオケに行く機会があるかもしれない。 そのとき盛り上がれるよう、 昔の曲をカラオケのレパートリーに取り入れておこう。」と思い立ちました。
それからというもの僕は、洋邦問わず、 当時一時代を築いたヒットソングを仕入れまくり、いつしか僕自身も、昔の曲が好きになっていきました。
これからは僕が、古いけど新しい、クールでホットなオールディーズヒットをこのブログを通して発信していきます。 きっと、あなたのココロもうごかす筈です。
それでは、ごゆっくりお楽しみください。
Stevie Wonder『Part-Time Lover』
冒頭でも触れた、言わずと知れたビッグアーティスト、 スティービーワンダー。彼の数々のヒットソングの中でも、最初におすすめしたい曲が『 Part-Time Lover』です。この曲を最初にもってきた理由は、単純に「いちばんノれるから」 。
1985年リリースのこの曲は、 当時ビルボードチャートの5部門で1位を獲得し、アメリカの音楽シーンを席巻しました。アップテンポな打ち込みサウンド、イントロのスキャット…。現代でも通用し、 また未来永劫、色褪せることは無いでしょう。
さてこの名曲、歌詞はというと…「パートタイム・ラバー」のタイトルから薄々察せる通り、 実はダブル不倫の歌。英語が分かるインテリジェントな方は眉をひそめるかもしれません 。
これについては当時から、 スティービーの知名度も相まって批判が大きかったようで、前年に発表した『I Just Called to Say I Love You(邦題:心の愛)』 との相当なテイスト落差にファンも驚いたと思います。
そんな、スティービーの表現の幅を世間に知らしめた『 Part-Time Lover』。
今夜はこれを聴きながら、 危険な愛に燃える妄想をしてみてはいかがでしょう。
あくまで、妄想ですよ。